子供の泌尿器科(小児泌尿器科)について
子どもの泌尿器疾患は、男の子・女の子にかかわらず発症します。 特にご相談が多いのが男の子にだけ発症するもののお悩みです。 泌尿器(おちんちん)の炎症や痛み、痒みなど子どもはうまく症状を伝えられない事が多いため、トイレを嫌がったりするなどご両親が違和感を感じる事があれば早めに受診をおすすめします。 また、お母様方は男の子おちんちんについてわからないことが多いのがあたりまえです。故に心配事が絶えないのも当たり前です。 どのようなことでも遠慮なくご相談ください。 また、トイレに関する悩みを放置すると、それが原因で保育園や幼稚園、小学校での集団にうまくなじめなくなることもあります。 子どもの泌尿器疾患について、男の子女の子にかかわらず発症するものと、男の子だけが発症するものに分けてご紹介します。
男女にかかわらず起こる小児泌尿器疾患
膀胱尿管逆流症
血液が腎臓でろ過されて尿がつくられ、腎盂から尿管を通って膀胱にたまり、尿道を通って排出されます。こうした尿の通り道が尿路です。膀胱にたまった尿が逆流して尿管や腎臓に送り出されてしまうのが膀胱尿管逆流症です。感染の可能性が高くなるため、繰り返し尿路感染症を起こして腎盂炎や水腎症、腎機能低下による腎不全を発症するリスクが高くなってしまいます。尿路感染症になると、高熱、背中・わき腹の痛みを起こします。また、下痢や嘔吐を起こすことや、頻尿・排尿痛を起こすこともあります。こうした症状があったら、できるだけ早く泌尿器科を受診してください。
神経因性膀胱
主な症状は、尿漏れや排尿困難などです。膀胱には尿をためて漏らさない機能と排尿時には勢いよく排出する機能がありますが、こうした機能に問題が起こって発症します。腎機能にダメージが及ばないよう、早期の受診が不可欠です。
尿失禁・オムツがとれない
昼間のお漏らし、尿意が起こるとトイレまで我慢できない、尿漏れといった排尿障害を起こします。尿路感染症リスクが高いため、腎機能を守るためにも早めの治療が重要です。二分脊椎や尿道の形態が狭い後部尿道弁によって排尿コントロールがうまくできないケースなども考えられるため、膀胱や尿道の神経・形態・機能に問題がないかを調べることも重要です。ただし夜間のおねしょで他に排尿障害の症状がない場合、6歳までの治療は必要ないとされています。ご心配でしたら、ご相談ください。
夜尿症(おねしょ)
一般的に、おねしょがあっても成長とともに頻度が減少し、ほとんどの場合は5~6歳でかなり少なくなります。夜尿症は、6歳を過ぎておねしょがある場合を指します。原因としては、夜間尿量が多い夜間多尿タイプ、尿をためる膀胱の機能が未発達な排尿未熟タイプがあって、さらにこの2タイプの混合タイプという3タイプに分けられます。
夜尿症の分類
夜間多尿タイプ
夜間尿量が多く、おねしょの量が多い傾向があります。抗利尿ホルモンの分泌不足や水分摂取量が多い、塩分の過剰摂取、ストレスなどによって起こっています。
排尿未熟タイプ
おしっこをためる能力やおしっこを我慢する能力が未発達で生じます。こうしたことから、昼間のお漏らしや頻尿をともなうケースも多くなっています。
混合タイプ
夜間多尿タイプと排尿未熟タイプの両方の原因があります。
診察
排尿日誌を記録します。排尿日誌の内容や、尿検査の結果などを参考に重症度を判定します。年齢が高く、夜尿の回数や量が多いと重症度も高く、年齢が低くて夜尿回数や量が少ないと軽症と判断されます。
排尿日誌
重症度判定や治療効果の確認に使われるため、継続して記録する必要があります。記録する項目は、排尿回数、排尿量、夜尿の回数や量、飲水量、最大我慢用量などです。
治療方法
おねしょの治療では、「怒らない」「起こさない」「焦らない」ことが最も重要とされています。「怒らない」「起こさない」「焦らない」という3条件を、ご家族全員がしっかりご理解されてからが、治療のスタートとなります。夜尿症は効果的な治療方法が確立していますので、「怒らない」「起こさない」「焦らない」ことを徹底し、安心できるような環境を整えて支えてあげてください。
夜間多尿型
夜間の尿量を減らすために、水分制限を行います。起床してからお昼までの午前中はたっぷりと水分を補給して大丈夫です。午後には飲水制限を行って、夕食は水分が少ないメニューを心がけます。そのまま就寝まで、できるだけ飲水しないようにします。入浴してのどが渇き、水をせがまれたら小さな氷を舐めてのどの渇きを解消させる方法も効果的です。状態によって、一時的に抗利尿ホルモン剤の処方を行うこともあります。
排尿未熟型
膀胱の容積が小さいことが原因になっているため、膀胱訓練を行って膀胱を大きくして尿がたまりやすくなるようにします。膀胱の収縮力を抑制する弱い薬剤を用いることもあります。膀胱訓練の目標は、小学校低学年で200㎖、高学年で250㎖以上です。抗コリン剤、抗利尿ホルモン剤、三環系抗うつ剤などを用いることもあります。三環系抗うつ剤を処方する場合は経過を観察して休薬期間をとるなど、特に慎重な処方が必要です。
男の子だけに起こる小児泌尿器疾患
子どもの包茎
包皮を下げて亀頭を露出できない状態で、亀頭がまったく見えない場合と、少しだけ見える場合があります。包皮輪が狭い場合や、亀頭と包皮が癒着していることもあります。男の赤ちゃんはみんな包茎であり、成長によって解消しますが、成人してからも包茎のままのことがあります。包皮が剥ける時期には個人差が大きいのですが、問題や支障がある場合には心身への負担を軽くするために治療をおすすめしています。また、炎症を繰り返すなどの場合には早期の治療が必要なケースもあります。
治療が必要な包茎
ほとんどの場合、自然に解消しますが、尿路感染症や亀頭包皮炎を繰り返す場合や、排尿障害がある場合には早めの治療が必要です。また排尿時に包皮が膨らむ、包皮を下げても外尿道口が見えないといった状態は、排尿障害を起こしやすいため、泌尿器科を受診して確かめてもらうと安心できます。
治療方法
保存的療法では、軟膏の塗布や包皮輪の拡張処置があります。こうした治療で解消できるケースも多いのですが、包茎解消を保つために一定の期間はご家庭でのケアが必要です。保存的療法で解消できないことはまれですが、その場合には手術で解消可能です。
軟膏による治療
1日2回、1ヶ月間ステロイド軟膏を塗布しますが、塗布範囲が狭いため副作用の心配はほとんどありません。この治療で90%に十分な効果が期待できますが、治療期間が終了した後もある程度の期間は入浴時に包皮を剥いて亀頭を露出させ、包茎に戻らないようにケアする必要があります。
手術
保存的加療では解消できない場合に検討します。
亀頭包皮炎
亀頭や包皮に細菌が感染して発症します。主な原因菌はブドウ球菌です。包茎があると発症リスクが高くなり、炎症を繰り返すこともあります。
症状
ペニスの先が赤く腫れて、痛み、膿などの症状を起こし、触ると強く痛むため触れられるのを嫌がります。尿道の炎症はないため、排尿痛が起こることはほとんどありません。
診察
赤み、腫れ、膿などの状態を視診で確認して診断できます。
治療
抗生物質の内服薬や軟膏による治療を数日行うと、ほとんどの場合は改善します。包茎が原因で炎症を繰り返す場合には、包茎を治療で解消する必要があります。
尿道下裂
尿道の出口がペニスの先端になく、他の部分にあります。先天的な形態異常であり、亀頭周辺、ペニスの付け根、陰嚢などに尿道の出口がある場合もあります。おしっこが出る位置がおかしい、おしっこがまっすぐに出ないなどに気付いたら受診してください。
移動性精巣(遊走睾丸)
陰嚢の左右には精巣が1つずつあります。陰嚢に触れても精巣の存在がわかる時と、わからない時があるのが移動性精巣です。緊張や刺激で精巣は上に上がってしまうため、リラックスした状態で左右同じ大きさの精巣が触れたら問題はありません。確かめるタイミングは、睡眠中や入浴中などが適しています。リラックスしている状態でも陰嚢底部まで精巣が下りてこない場合は、停留精巣が疑われます。停留精巣は治療が必要ですから、心配があれば受診してください。
停留精巣
胎児の精巣は最初、腹腔内にあります。成長に従って徐々に下降し、誕生時には陰嚢に収まっています。この下降が途中で停止してしまった状態が停留精巣です。どこで下降が停止するかには個人差があります。将来の造精力に影響して男性不妊につながる可能性がありますし、成人まで放置するとがんを発症するリスクが高くなります。精巣の位置がおかしいと感じたら気軽に泌尿器科を受診してください。
症状
出生時や誕生後の定期検診で発見されることが増えています。指摘を受けたり、おかしいと感じたらご相談にいらしてください。
診断
触診を行った上で、超音波(エコー)検査などを行って精巣の位置を確認します。鼠経管や腹腔内に精巣がある場合には腹腔鏡検査を行うこともあります。
治療
自然な下降はほとんど望めないため、手術が必要です。手術が可能になったらできるだけ早く受けることで、精巣の成長に影響を与える期間を短縮できます。
小児の陰嚢(精索)水腫
陰嚢にある精巣と精索は、周囲を陰嚢内鞘膜に包まれています。陰嚢水腫は、陰嚢内鞘膜の中に体液がたまっている状態で、将来の造精力に影響して男性不妊につながる可能性があります。胎児の時期に陰嚢内鞘膜には腹腔から出ている鞘状突起が通じていて誕生後に閉鎖します。この閉鎖が起こらないと体液が陰嚢内鞘膜にたまってしまうのです。
症状
出生時や誕生後の定期検診では陰嚢の大きさを確認します。その際に陰嚢水腫や精索水腫の指摘を受けるケースがあります。主な症状は陰嚢の腫脹です。痛みなどの症状はありません。
診察
鼠経ヘルニアとの鑑別のために、超音波(エコー)検査で滞留の有無を確認します。
治療
新生児や乳児の陰嚢水腫はそのまま様子をみて問題ありません。おなか(腹腔)とつながっていますから時々大きくなったり小さくなったりしますが、多くは成長とともに腹膜鞘状突起のつけ根が閉じて腹腔内との交通がなくなり消失します。ただし腸が降りてくるソケイヘルニアに気がついた場合は早期の手術をおすすめします。また、しかし3歳頃になっても消失しない場合や大きくなったり小さくなったりを繰り返している場合も手術をおすすめします。